わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

英語教育について,また2つ

ひとつは:

もうひとつは:

昨日(3月3日)の放送ですが,NHKオンデマンドで視聴できるようになっています.105円をYahoo!ウォレットで決済し,通して観ました.
2つの情報には,接点があります.江利川先生が書かれた

他方で、英語が苦手な生徒をどう支援するかについては、1行も書かれていません。
中学・高校の英語教育は、英語が苦手な子も含む全員を育てる「国民教育」です。
ところが、その視点がすっぽり抜け落ちているのです。

高校英語教師からの手紙(3) ( その他教育 ) - 希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ) - Yahoo!ブログ

に対して,

中原さんは、学年で一律だった学習内容を来年度から変え、小中学校の内容から学び直せるようにしようと考えています。
例えば数学につまずいた生徒には、小学校高学年の授業を用意。
生徒の到達度に合わせた授業を選択できるようにしようというのです。

NHK クローズアップ現代

とあります.NHKオンデマンドでは7分20秒あたりです.「中原さん」とは,大阪府教育委員会 教育長の中原徹氏*1のことです.
上の引用の右には,イラストがあります.動画では最初,「高2数学」「高2英語」「高2国語」の3つが並んでありました.これまで,高校2年生は一律に高2の教材で学習してきた,という意図がうかがえます.ナレーションを進めながら,「高2数学」を「小学校算数」に,また「高2英語」を「中1英語」に,置き換えていました.


誰が正しいだとか間違いだとか,みなさん立ち上がりましょう教育をより良くしていきましょうだとかを,自分に言う筋合いがないのはもとより承知しています.
ですが2つの情報を照合させたとき,前者3つの記事の本文・コメントで誰も,NHK総合で良い時間帯に放送していた,このクローズアップ現代の番組のことを触れている人がいないのは,どうも気になります.
気になるのは2点あって,一つは単純に,「クロ現みたんだけど」と言う人がいないこと,もう一つは,番組として報道するしないに関わらず,「中原さんは、学年で一律だった学習内容を来年度から変え、小中学校の内容から学び直せるようにしようと考えています」という方針で進めているという,大阪府の教育の改革について,察知し指摘する人がいないことです.
そんな状況で,国民目線・市民目線で働きかけが進められるのか,少々不安なのです.「市民」について補足しておくと,番組の後半では,舞台を箕面市に移しています.箕面市教育委員会は6人のうち4人を保護者から選んだとのことで,いじめ対策の事務局案に対し,保護者の委員らが厳しい意見を言うシーンも見られます.
繰り返しになりますが,私自身は英語教育のこれからについて提言するだけの見識はなく,せいぜい,読んだり書いたり,聞いたり話したりする中で得た個人的な経験を,当ブログで書いていくのみです.
若い英語教師の授業を見て首を縦に振らなかった指導主事のスタンスも,政府の動きも各自治体の試みも,そして江利川先生が主導されている活動も,浮き沈みが繰り返しされ,そのうち「これまでのやり方じゃダメだ」「○○に頼ってばかりいられない」などと唱えながら,別の勢力が台頭し,2013年・2014年の出来事が過去のことになってしまうのだろうなと,想像しています.


かつて書いたことから:

『国際的日本人が生まれる教室』で,なるほどと思ったのは,グローバル人材を著者なりに定義していることです.その定義は,「異なる文化,言語,宗教の人々と最大公約数的な理解のもとに共存できる人材」(p.19)です.ここに,かつて研究を通じて学んだ,コンテキストとコンセプトの違いが凝縮され,体現されていたのでした.

英語教育について,正反対の2冊を読む

「フルコース」というと,高校3年のときの塾を思い出します.
同じ学年とはいえ,学校も,学習内容もまちまちだったので,個人学習・個別指導でした.
ある日,女子生徒が先生(女性)に喜んで「フルコース行ってきたの」と言いました.
その先生ははじめ,何のことなのか分かっていませんでした.エリア・時代限定かもしれませんが,「フルコース」が「ぼこぼこにする(全身を殴る蹴る)」という意味で使われることもあったのでした.でも,その生徒はぴんぴんしています.加害者というふうにも見えません.
たしかその生徒は,私立の女子校に通っていましたので,おそらく,一つはテーブルマナーの学習として,またもう一つは卒業前の懇親という意図も込めて,学校がフルコース料理をセッティングしたのでしょう.

英語の論文はフルコースの料理

「〜〜が常識だ」という主張を克服する,また別のアプローチとして,それと対立するような,何らかの共通認識を,持ってくることも考えられます.その際,「常識」という言葉を使わないのが肝心なところです.『英語教育、迫り来る破綻』について,本記事冒頭に引用したのは,このアプローチを見せています.「やっぱり専門家がもっと発言しないとだめだと思いますよ。」を受け,引用のあとは,「声を上げるべき人がいない」という小見出しで,トークが進んでいきます.

常識を認識し,乗り越える

(最終更新:2014-03-05 早朝)

*1:番組では「抜擢」と言っていました.間違いではないものの,教育長になる前の話(wikipedia:中原徹)をすっ飛ばしたのには軽く驚きました.