わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

理系数学の5択問題

いきなりですが問題です.

B8 xyは正の実数で,y=4x^3とします.\log yをx座標,log xをy座標とする点の集合は,つぎのどれになりますか.
(ア) 1点
(イ) 3次曲線
(ウ) 放物線
(エ) 直線
(オ) 指数関数の表す曲線

さっそくですが答えてみます.対数の底が明記されていませんが,以下のとおり考えれば,底は任意で良さそうです.
\log yをx座標,log xをy座標とする点の集合」とあるので,その座標を(X,Y)とし,XYの関係式を求めます.
まず,X=\log yおよびY=\log xが成り立ちます.
そこでXの式に,y=4x^3を代入すると,X=\log 4x^3=3\log x+\log 4となります.
これとY=\log xを用いて,\log xを消去し,整理すると,X-3Y-\log 4=0を得ます.
これは(X,Y)の2次元平面上で,直線を表した式です.よって答えは(エ)です.
なお,直線を特定することはできません.\log 4において底を何にするかに依存するからです.
といったところで元ネタです.

高校生の数学力NOW 9―2013年基礎学力調査報告

高校生の数学力NOW 9―2013年基礎学力調査報告

この本のp.21で,上記の問題文が,箱囲みになっています.直後には,「その反応率は(ア) 3.9%,(イ) 15.2%,(ウ) 20.9%,(エ) 29.0%(正答),(オ) 28.3%であった」とあり,過去2年間の実施でも,同じような割合とのことです.
「B8」についても,書いておかないといけません.学力調査をするにあたり,A,B,C,Dの4つの問題セットを作成しています.どの問題セットも11問あり,「B8」はその8問目ということです.11問のうち,1から8まではいずれも5者択一で,9から11までは記述式です.
書名だけを見て本を手に取り,出題の多くが選択式になっているのを見たら,かなりの人が「数学も選択式!?」と思うかもしれません.これはさまざまな形で学力を分析しやすくするために採られた方法です.項目反応理論(項目応答理論,IRT)を用いて,各出題の困難度と識別力を推定し,過去のものを含め他との比較などにより,問題の特徴を捉えやすくなります.
比較について,p.58の事例が興味深いです.定積分を求める問題です.正答率の折れ線グラフを見ると,2005年実施では,上位レベルと中位レベルの正答率がほぼ同じだったのが,昨年の実施を含む直近3年間では,上位が離れ,中位と下位が近づいています.折れ線グラフそのものは,IRTなしで作図できるのですが,ここに「識別力0.48」という低さ*1を組み合わせることで,この出題において中位・下位では,受験者の正答率が近年変わらなくなっているという分析に,「グラフから明らか」以上の根拠を与えています.
学力調査の実施方法や対象者についても,記されています.数学III・数学Cを履修している生徒を対象としているのは,「理数系進学希望者に対して数学の基礎能力調査を実施することとした」(p.8)という目的のほか,それらを履修していれば数学A,Bや数学I,IIも学習していると考えてよいこと,また「数学のテストなんてイヤ」という意思の生徒を対象としないためかと思われます.
生徒が解答に対して「自信あり」「あまり自信なし」「全く自信なし」の3択で答えさせ,正解率と自信度による表がつくられている(p.25)のも,全国共通ではなく,目的と対象者を制限*2した上での調査ならではの感があります.
平成24年度入学者---現在3年生!---から,高校数学の内容が様変わりしましたが,今年実施ではどのように出題内容,そして解答状況が変わるのか,変わっていないのかは,おそらく来年に出る続刊に期待するとします.

(最終更新:2014-10-31 早朝)

*1:識別力の概況についてはpp.46-47より:「識別力とは,その問題が受験者の能力を推定する際の効力を表す数値であり,値はおよそ0〜2の範囲で大きいほど効力が大きい」.

*2:該当校すべてではなく,p.9によるとまず250校を抽出し,そのうち92校が調査に参加したとのこと.