わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

6人で5個

いきなりですが問題です.

ケーキが5個あります。おじいちゃんとおばあちゃん,おとうさんとおかあさん,妹と私の6人で分けます。1人どのくらい食べられるでしょう

元ネタは以下の本のp.50です.

該当箇所の執筆者は池田敏和氏で,別の本(雑誌)の解説記事を,今年,正方形でない長方形を持ってきてくださいで取り上げました.
算数としては\frac{5}{6}個だよなあと思いながら,右のページを見ると,以下のとおり,さまざまな分け方が書かれています.

(1) 1人:\frac{5}{6}
(2) 妹と私:\frac{3}{2} 残り4人:\frac{1}{2}
(3) おとうさん:\frac{3}{2} 妹と私:1 残り3人:\frac{1}{2}
(4) 妹と私:\frac{1}{2} 残り4人:1
(5) 1個ケーキを買ってきて1人1個
(6) 2個は近所に分けて1人\frac{1}{2}

問題文を読み直すと,「分けます」であって,「等しく分けます」ではないので,(2)や(3)や(4)のような分け方も,認められるのでした.一方,「ケーキが5個…6人で分けます」という設定からすると,ケーキの数を増減させるような(5)や(6)は,反則のようにも思えますが,多様な発想ということで,とりあえず受け入れましょう.
ですが,本文は「どれでもいい」という結論になっていません.6つの答えと空行のあと,「分け方にはいろいろあることを確認した上で,例えば,(1)だけが答えになるようにするには,どのような仮定を設定すればよいかを発問していくとよいだろう。」で段落が始まります.
直後に,答えです.「各々のケーキは同じ大きさ」「ケーキの大きさは一人ひとりに等しく分けられる」「5個のケーキすべてを6人で分ける」を挙げています.次に(2) (3) (4)が答えになるようには,どうすればよいだろうかとあり,その答え(設定すべき仮定)は,読者に委ねられています.
もう少し読むと,「仮定を設定しないと答えは多様になること,言い換えれば,仮定を設定することで答えが1つに定まることを理解することができる」が,同じ段落の中にあります.
算数教育に限らず,自分がふだん関わっているプログラミング科目の課題設定のほか,研究成果を誤解されないよう適切にアピールしたり,他の人の論文や口頭発表を見聞きして暗黙の了解事項を発見したり,あるいは別の仮定を置いたらストーリーはまた変わるのではないかと考えたり,いろいろと活用できそうです.


上の(1)から(6)の並びについて,気になるところが出てきました.(日本の)小学校の算数だったら,\frac{3}{2}(個)ではなく1\frac{1}{2}(個)と書くはずです.もらえるケーキの数量について,(5)のみ「(1人)1個」,残りは「個」なしというのは,統一感に欠けているように見えます.「1人どのくらい食べられるでしょう」というのであれば,ジャンケンでもして勝者1人が総取りすれば,最大5個食べられる,という答えだって,ありなはずです.
冒頭の問題の直前に「(池田,2007)」と書かれています.以下の文献です.

購入してPDFをダウンロードすると,p.5に,箱囲みで問題文が書かれていました.(1)から(6)までの分け方は,表記は少し異なるものの,数量は,上記とまったく同じです.こちらの文献では,ケーキに関する数量はすべて「個」がついており,例えば「(1) 1人:\frac{5}{6}個」とあります.
箱囲みの問題文の前の行では,「1)」が上付きになっていました.p.9に註があって,「1) この問題は,ICME10 (2004)において,フロンデンタール研究所*1のGravemeijer氏(オランダ)の講演で取り上げられた問題である.」とのこと.
\frac{3}{2}という,仮分数による表記は,その講演で表示されており,池田氏がそれを“輸入”して,2007年の寄稿,そして今年の書籍の解説で,そのまま使用したと思って良さそうです.
6人で5個を等しく分ける「方法」を,検討しておきましょう.まず思い浮かぶのは,5個のケーキをすべて6等分して,5切れずつ分ける,というものです.ですがそれは,切りすぎ---25回*2も切るの!?---と言わざるを得ません.
次に,どのケーキも\frac{5}{6}個と\frac{1}{6}個に分けて,6人のうち5人が\frac{5}{6}個のケーキを取り,残り1人が\frac{1}{6}個を5つ取るのは,どうでしょうか.なんだか,\left(\frac{1}{6}\times 5\right)個の人が可愛そうに見えますね.
こうしましょう.まず,5個のケーキを3個と2個に分けます.3個のほうは,いずれも,2等分します.2個のほうは,3等分します.おじいちゃんもおばあちゃんも,おとうさんもおかあさんも,妹も私も,2等分した1きれと,3等分した1きれをもらいます.そうすると,みな同じ数量なのが明らかですし,切る回数は7回*3で済みます.
この分け方のテープ図と,「\frac{1}{2}+\frac{1}{3}」という式については,池田(2007)に記載されていました.

*1:http://www.uu.nl/en/research/freudenthal-instituteと思われます.Freudenthalの著作は,http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20111125/1322171246で取り上げていました.

*2:ケーキが(上から見て)長方形の形をしており,ようかんを食べるときの切り方を,仮定しています.その場合,1個を6等分するには,5回,切れ目を入れることになります.ケーキが円形であったり,縦横に切ったり,何きれかを一度に切ったりできるのであれば,回数は減らせます.

*3:1つ前の脚注と関連しますが,ケーキは長方形型を仮定します.円形だと,3等分するのに3回切る必要があるため,合計回数は増えます.