わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

同じ量,違う量

いきなりですが問題です.次の文章題について,数量の関係を,表にしましょう.未知の数量は「?」にしてください.

おなじ おおきさの がようしが 8まい あります.
1まいの がようしから 4まいの カードを つくります.
ぜんぶで 何まいの カードを つくることが できますか.

さっそくですが解答です.単位はそれぞれの数に添えるのではなく,表側にカッコ書きで入れています.

がようし(まい) 1 8
カード(まい) 4 ?

続いてですが問題です.表にしましょう.

1mの高さから落とすと,0.4mの高さまではね上がるボールがあります。このボールを0.7mの高さから落とすと,何mの高さまではね上がりますか。

これは,こうなります.

落とす高さ(m) 0.7 1
はね上がる高さ(m) ? 0.4

まだまだあります問題です.これも,表にしましょう.なお,「硝子」は「しょうし」と読みますが「ガラス」のことです.

この教室の左側には硝子障子が6枚あります.1枚に硝子板が6枚づつはめてあると硝子板が皆で何枚になりますか。

表は次のとおりです.

硝子障子(枚) 1 6
硝子板(枚) 6 ?

こういう問題もあります.表にしましょう.

(4) 0.4時間は,何分ですか.

解答です.

時間 0.4 1
? 60

最後にですが問題です.表はどうなるでしょうか.

1インチは2.54センチメートルである.3.1インチは何センチメートルか?

こうですかね.

インチ 1 3.1
cm 2.54 ?


以上について,当ブログの元ネタです.

求める式ですが,いずれもかけ算で,順に,4×8=32(まい),0.4×0.7=0.28(m),6×6=36(枚),60×0.4=24(分),2.54×3.1=7.874(cm)となります.
数の出現する順序に関しては,最初のものだけ,「8」と「4」をひっくり返してかけており,あとは出現順です.あ,いや,硝子も,「硝子障子がa枚あります.1枚に硝子板がb枚づつはめてあると」だとb×aになりますね.
「×」の左右どちらにどの数を置くかのルールは,5つとも共通しています.「?」と同じ行の数を,かけられる数に,同じ列(「?」のすぐ上)の数を,かける数にします.
理屈としては,「?」のない行には,1と,かける数がありまして,1からそのかける数“倍”すると,「?」のほうも,基準量から同じだけ“倍”すればよいのです.これは言ってみれば,横方向のかけ算であり,Vergnaud (1983)に見ることができます*1.『算数・数学科重要用語300の基礎知識』では「スカラー関係に基づく乗法」と訳されています.
ただし例外もあって,「0.4時間は,何分」について,「時間を60倍すれば,分になる」というルールを使うなら,0.4×60=24(分)により求められます.表の縦方向に見て「60倍」を得る考え方も,Vergnaud (1983)に載っていて,「関数関係に基づく乗法」の訳があります.
なお,「がようし」と「0.4時間」は創作です.残りは各記事で挙げたとおり,大正時代に1つ,平成に入ってから2つの出典があります.
5つのうち,はじめの3題は,同じ単位ばかり出現しますが,数量を整理してみると,「がようし」と「カード」,「落とす高さ」と「はね上がる高さ」,「硝子障子」と「硝子板」のように,それぞれ分けることができます.そしてこれらにおいては,各条件のもと,さまざまな値を考えると,行ごとに量空間をつくることが分かります.もちろん表ごとに,2つの行は,互いに異なる量空間となります.
それに対し,あとの2題は「単位の換算(変換)」に関わるもので,「0.4時間」と「24分」,「3.1インチ」と「7.874cm」はそれぞれ,表記は異なりますが,同じ量を表します.円ドルなど,外貨の両替でも,同様の関係が言える(かけ算やわり算で,両替後の金額が求められる)のですが,そのレートは,分と時間,インチとセンチよりも流動的です.


本日の内容は,数日前のツイートとそのリプライをもとにしたものですが,まったく異なる方面から,考えさせられた一節があります.

算数授業研究 Vol. 109 論究 X

算数授業研究 Vol. 109 論究 X

中博史氏による巻頭言では,次の文章が段落になっていました.

ネット社会が定着してきた時に,やはりインターネットの情報は不確かなものが多いから,きちんとよく見比べて何が正しいかを本人が判断しないといけないと,情報リテラシーの研究会などでは既に話題に取り上げられてきたが,今は出版物においてでさえも大量に出された本を見て,同様の心配をしなくてはならない時代である。

インターネットの情報にせよ,出版物にせよ,1つ1つ吟味すること,また普段からそれを行い審美眼を養うことは,教育に限らず不可欠なことだと思います.
あともう一つは,そうして得られた諸情報をカタログ化することかなとも思っています.出版物を出せる立場の人はその方面から,なさってきているわけですし,ネットで情報発信できる側からすると,たとえば1つのページに(URL指定でアクセスできるように)取りまとめる,ということになります.
本記事も,ネット社会の1つの情報となればいいのですが.

*1:http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20140924/1411511070.ただし原文では,縦方向に同じ種類の量を置いているので,本記事とは縦・横が反対になります.