わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

頒布,はんぷ,distribution

OSSライセンスの教科書

OSSライセンスの教科書

オープンソースソフトウェア(OSS)にどのようなものがあるのかではなく,そのライセンスとしてどのようなものがあり,個別のライセンス,そしてOSSの活用に関して,どのような点に注意すれば良いかが,整理されています.Android OSを基盤としたスマートフォンを製品化(p.54)し販売するとなれば,その製品の数だけ,OSSを組み込んで受け渡しすることになるわけで,取扱いに細心の注意を払わないといけないのも想像がつきます.
「受け渡し」と書きましたが,今回読んだ本では「頒布」という二字熟語を使用し,p.51以降できちんと解説しています.ページをめくると,p.52には図があり,p.53には網掛けで,「『頒布』の意味」と題するコラムを読むことができます.「頒布」は,GPLにおけるdistributionの参考訳で使われていることに由来し,著作権法で定義された「頒布」とは,意味が異なることも記されています.なおこのコラムには,「GUN」という誤記のほか,「たとえば、など、頒布に該当するか判断に苦慮する場合があるかもしれません。」という編集ミスも見かけました*1.増刷により修正されることを,期待したいと思います.
目次より前のp.vで,「本書を講義に使う場合」と題して,「大学、特に計算機科学系の学部・大学院」での利用のことも書かれていました.私自身はOSSどころかソフトウェアそのものに関する授業を,担当しているわけではありませんが,2年後期の演習でApache HTTP Server,3年前期の演習ではApache Tomcatを使用して(受講者にそれぞれインストールさせて)いますし,3年前期の講義(ネットワークセキュリティ)ではOpenSSL,GnuPG,OpenSSHなどを紹介しています.我々は末端の利用者あるいは開発者として有償無償のソフトウェアを使うだけでなく,将来的には提供する側に立って,ソフトウェアをリリースし多くの人に安心して使ってもらうには,どのような点に配慮が必要となるかを,かいつまんで学部生向けに話すこともしていきたいと,考えています.
自習書(課題図書として指定しレポートを書かせる場合も)として活用する際,「頒布」の読みが「ぶんぷ」ではなく「はんぷ」となる点には,くれぐれも注意が必要と感じました.

*1:現時点でサポートページhttp://gihyo.jp/book/2018/978-4-297-10035-3/supportには載っていません.