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「学校の働き方を考える教育学者の会」について

呼びかけ人・賛同人の方々について,いくつか著書を当ブログで取り上げたことがあります.それはそれとして,「(小中高の)教職を経て,教育学者になった」という人がいるのかなと思いながら,経歴のわかる情報をざっと調べてみました.
呼びかけ人の方々はいずれも,Wikipedia日本語版に載っていました.

賛同人(本記事執筆時点では7名)については,Wikipedia以外の情報も必要としました.

「(小中高の)教職を経て,教育学者になった」という方は,公開されている経歴を調査した限りでは,見当たりませんでした.
ところで,この会のトップページには「給特法の改正等の必要性を教育学者に呼びかけるため,さらには教育学者の声を中教審ならびに文科省に伝えるため」と目的が書かれています.小中高の先生方は,この会の方向性に沿って労働環境が変わればその恩恵を得られるとはいえ,基本的には会の活動の「外」となる点に,少々不安を覚えます.
思い浮かぶのは以下の本です.

日本の算数・数学教育に学べ―米国が注目するjugyou kenkyuu

日本の算数・数学教育に学べ―米国が注目するjugyou kenkyuu

  • 作者: ジェームズ・W.スティグラー,ジェームズヒーバート,James W. Stigler,James Hiebert,湊三郎
  • 出版社/メーカー: 教育出版
  • 発売日: 2002/11
  • メディア: 単行本
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タイトルから分かるように対象は「算数・数学教育」であり,少し広げて「教科教育学」という言い方はできます.したがって「学校の働き方を考える教育学者の会」とは対象(改革するのは誰なのか)が異なるのですが,改革運動という観点では,示唆するものがあるように感じたのでした.例えば以下の箇所です.

この改革運動において米国数学教育学会が取った方策は,米国における改革に共通して見られる方法の具体例であると言えます。専門家が招集され,教職に関する研究と実践とを調べ,改革に向けた勧告を作り上げます。このような勧告は文書のかたちにされて広く配布されます。それらの文書の一つ,米国数学教育学会の「算数・数学科学習指導の専門職的基準」は,児童・生徒の学習水準の向上のためになぜ学習指導の変革が必要であるかについて,かなり明確に述べています。米国数学教育学会が描く変化は本質的なものです。(p.102)

学習に関する長期的にわたる改善のかわりに,限られた特性とか活動によって学習指導の成功を定義するためにこのようなことが起こるのです。このことが生じるかぎり,改革論者が最善のものとして提示した計画は期待に反した結末を迎えます。(p.104)

(略)実際に教師はたいてい自分の学習指導と改革勧告とを表象的なかたちにおいて合致させているにすぎないのに,米国数学教育学会の改革勧告を知っていると言ったり,さらにビデオテープの授業でそれを実践していると信じていたりすることになるわけです。(p.105)

ここまでの引用を,学校の働き方を考える教育学者の会・トップページの1週間の学内総勤務時間の図に適用すると,例えばこうなります.今後,継続的な教員勤務実態調査により,勤務時間が短いほうにシフトしているのが分かったからといって,教員の環境が改善されたとは限らないのです.自己申告(タイムカードも同様)で時間を短くすることや,自宅に持ち出して勤務することを,除外できないからです.テストの答案など個人情報を含むものは持ち出さないよう,ルールを定めることはできても,授業の教材作成*1について,校外での実施を禁じることは,現実的でしょうか.


サイト内の各ページを見て気になったことを2つ.

*1:個人的に念頭に置いているのは,主に小学校の授業で,画用紙などに書くなどして「モノ」を用意することです.