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2階の導関数の「2」のつけ方

いきなりですが問題です.

yをxの関数として,その導関数は例えば\displaystyle\frac{dy}{dx}と書きますが,2階の導関数は,\displaystyle\frac{d^2y}{d^2x}ではなく,\displaystyle\frac{d^2y}{dx^2}と書きます.なぜでしょうか.

さっそくですが解答です.2階の導関数を,\displaystyle\frac{d^2y}{dx^2}と書くのはなぜかというと,wikipedia:微分の記号wikipedia:ライプニッツの記法を見るといいでしょう.3階の導関数が,入れ子の分数式で表現されています.2階の導関数だと次のようになります.
\displaystyle\frac{d\left(\frac{dy}{dx}\right)}{dx}
これについて,「分子のdxと分母のd」をひとかたまりと見なし,\displaystyle\frac{df(x)}{dx}=\frac{d}{dx}f(x)の等式*1に,\displaystyle f(x)=\frac{dy}{dx}=\frac{d}{dx}yを代入すると,2階の導関数は次のように表せます.
\displaystyle\frac{d}{dx}\frac{d}{dx}y
そして,\displaystyle\frac{d}{dx}が2回続くのだからということで,べき乗で表記すると,次のような式にできます.
\displaystyle\left(\frac{d}{dx}\right)^2y\displaystyle\frac{d^2}{(dx)^2}y\displaystyle\frac{d^2}{dx^2}y
最後に書いた式について,yを分子に戻すと,\displaystyle\frac{d^2y}{dx^2}になるという次第です.2階のみを考えましたが,同様にしてn階の導関数は,\displaystyle\frac{d^ny}{d^nx}ではなく,\displaystyle\frac{d^ny}{dx^n}となります.
2階の導関数を,\displaystyle\frac{d^2y}{d^2x}と書かないことについて,それは表記の慣例で片づけることもできますが,(1階の)導関数と2階の導関数との違いを一つ,検討しておきます.(1階の)導関数では,逆関数微分公式というのが使えます.以下の等式です.
\displaystyle\frac{dy}{dx}=\frac{1}{\frac{dx}{dy}}
もし,2階の導関数を,\displaystyle\frac{d^2y}{d^2x}と書いてよいとするのなら,逆関数微分公式についても同様に,以下の等式が成り立つことを,期待したいところです.
\displaystyle\frac{d^2y}{d^2x}=\frac{1}{\frac{d^2x}{d^2y}}
関数を一つ用意して,確かめてみます.分数形式で煩雑になるのを避けるため,プライム記号を採用します.すなわち,yをxの関数と見なしたとき,xによる微分(1階の導関数)をy',2階の導関数をy''と表記し,xをyの関数と見なしたとき,yによる微分(1階の導関数)をx',2階の導関数をx''と表記します.
y=\sqrt{x}(x>0)を考えます.y=x^{\frac12}ですので,xで微分すると,y'=\frac12x^{-\frac12}y''=-\frac14x^{-\frac32}を得ます.次に,x=y^2と変形して,xをyの関数と見なしたとき,x'=2y(このとき\frac{1}{x'}=\frac{1}{2y}=\frac12x^{-\frac12}=y'となります),x''=2です.
ここで,\displaystyle y''=\frac{d^2y}{d^2x}\displaystyle x''=\frac{d^2x}{d^2y}と割り当てたとき,\displaystyle\frac{d^2y}{d^2x}=\frac{1}{\frac{d^2x}{d^2y}}は,成立しません.逆関数微分公式を,単純に2階の導関数に拡張できないことを意味するとともに,d^2xd^2yとをいわば対等に扱うのはおかしいと,言うこともできそうです.
別の観点でのメリットが,wikipedia:ライプニッツの記法に記されています.「次元解析との整合性」で,\displaystyle\frac{d^2y}{dx^2}は,\displaystyle\frac{y}{x^2}と同じ次元を持つとしています.次元解析の観点では,xとyを何らかの(一般にそれぞれ異なる)量,dは無次元量と考えればよいということです.


ところで,wikipedia:微分の記号wikipedia:ライプニッツの記法とで,dが合計6回出現する,3階導関数の式の見え方が異なっています.後者は次のとおりです.

最も大きなカッコの中に,空き区間が見られます.これは,その中の分数の横線が,カッコの上下中央になっているからです.
Wordで数式モードを使用したり,LaTeXで式を作ったりしてみても,同じように空きが出現しました.

*1:これは定理ではなく,「書き方の変換」となります.