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1平行1垂直の四角形をつくる

 以下の図で,格子点を4つ選んで結び,四角形をつくります.

 例えば,以下のように結んだ図形は,正方形です.

 この4つの辺には,平行となる直線の組み合わせが2つ,垂直となる直線の組み合わせが4つあります.そこで「2平行4垂直」と呼ぶことにします.
 以下の2つの図形も「2平行4垂直」です.

 以下の図形は「2平行0垂直」です.(長方形でない)平行四辺形です.「2平行1垂直」「2平行2垂直」「2平行3垂直」という図形を,作ることはできません.いずれも「2平行4垂直」になってしまいます*1

 それでは,問題です.「0平行2垂直」と「1平行1垂直」の四角形を,それぞれつくってください.


 元ネタです.

  • 青山尚司: 平行だけでなく,垂直も観点に加えた四角形の弁別より, 算数授業研究, No.137, pp.58-59 (2021).

 といったところで解答です.上のダイヤモンド型(◇)では,どの辺も,水平・鉛直方向でない,斜めの線です.これを活用すると,例えば以下の2つが,「0平行2垂直」となります.

 これらは元ネタの図4と同形です.前者について,この格子点の左下を(0,0)とすると,(1,2)で直角となっているのは,小学校なら三角定規または分度器を当てて確かめられますし,中学の数学なら,各辺を含む2つの直線の傾きが\frac{1}{2}と-2で,傾きの積が-1のときは直交するという性質を使うことでも,示すことができます.
 次の解答に行く前に,図3が興味深かったので作図しました.

 この図形において,(1,2)でできる角は,四角形の内角の一つと見ると,270°となります.ですが2つの辺の関係としてだと,直交しており,今回の授業に関しては,これも垂直です.平行になる辺の組み合わせはありませんので,「0平行1垂直」です(とはいえ,「0平行1垂直」の四角形は,もっと簡単につくることができます).
 もう一つの「1平行1垂直」に進みましょう.何通りか,作図してみると,平行な2直線のうち,一つの直線に垂直となるような直線は,もう一つの直線とも垂直となることに気づけます.ということで,「1平行1垂直」をつくろうとしても,「1平行2垂直」になってしまう,というのが思い浮かぶところです.
 この限界を克服するやりとりを,p.59より抜き出します.

 児童が平行の定義を用いたことから,敢えて「じゃあ,垂直って何だっけ?」と問いかけた。ノートを見返して「交わった時に直角ができる直線の関係」と話した児童に対して,「交わってなくても良いんだよ」という児童がいた。そして,また別の児童が,「そうそう伸ばして直角ができれば……あ!」と何か気付いた様子であった。「どうした?」と問うと「1平行1垂直できる!」と答えた。ここから児童は,延ばしていけば直角に交わる辺を探し始めた。そして発見したのが,図5の等脚台形であった。(以下略)

 つくられた等脚台形は,次のものです.

  平行でない,向かい合った2辺を伸ばしていくと,確かに直角ができます.

 ここで,『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説算数編』にアクセスし,垂直の解説を見ておくと,p.202にあります.垂直の定義*2は「二つの直線が直角に交わっているとき,この二つの直線は垂直であるという。」です.また「ここで,垂直とは二直線の位置関係を表すものであり,形としての直角とは異なることに注意する。」とも書かれています.これは,上の会話のうち「交わった時に直角ができる直線の関係」や「交わってなくても良いんだよ」を支持するものとなります.
 なのですが,この解説では「直線」の定義が見当たりません.中学数学で学習する直線・半直線・線分を援用するとなると,次のページの「四角形の対角線とは,向かい合う頂点を結んでできる直線である.」と「ひし形には,2本の対角線が(略)互いに二等分されている」を組み合わせたとき,ひし形の対角線という無限の長さを二等分する操作が必要となります.
 小学校の算数と,大学のコンピュータグラフィックスでは,「直線」は,あるときには中学数学で学ぶ「直線」の意味で,またあるときには「線分」の意味で使われているように思います.
 ともあれ,「0平行2垂直」と「1平行1垂直」の存在が肯定的に示せました.図6として,「交わった時に直角ができる直線の関係」を活用した「0平行2垂直」の図形がありましたので,これも画像化しました.

 平行・垂直の判定と作図を行うプログラムをGistに登録しました.実行にはrubyのほか,ImageMagickのconvertコマンドも必要です.実行するとq1.pngからq9.pngまでを生成します.

2023年8月追記

  • 青山尚司: 新種発見! 「○平行○垂直四角形」, 算数授業研究, No.147, pp.14-15 (2023). [isbn:9784491053189]

 上記の元ネタと読み比べたところ,図1から図6まで,サイズや明るさは異なるものの,同一画像と思われます.本文も類似しています.No.147の中に,No.137に既出である旨は,書かれていませんでした.

*1:関連:https://takexikom.hatenadiary.jp/entry/2017/12/06/043310

*2:ただし,「定義」とは書かれていません.「そこで,はじめに垂直の関係について約束し,その上で,平行の関係について約束する。」です.