わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

客観的な検証

 今年,自分が文章にした中で,何度も読み直しているのは,以下の箇所です.

 どの学習事項(文法知識など)をいつ修得させるべきかというのは,担当教員の教育観によるところもあり,客観的な検証は困難である.その一方で,既存のコンテンツ(プログラミング授業においてはソースコード)を分析するのであれは,機械的処理および人的チェックが容易となる.

 「タイピングによるプログラミング学習のためのソースコード提示に関する一検討」という題目で8ページの予稿を提出し,口頭発表しました---というのは発表の経緯で書きました.本文PDFはhttps://doi.org/10.2964/jsik_2021_033よりダウンロードできます.上記は予稿の最初の節の最後から2番目の段落です.この節の最後の段落は,「このような背景のもと,本稿では」から始まり,実施内容を述べています.
 「どの学習事項(文法知識など)をいつ修得させるべきかというのは,担当教員の教育観による」について,予稿に書かなかったけれども,念頭に置いたことを挙げると,Cプログラミングの導入時に,printf関数のことをどのくらい詳しく解説するのがよいかです.
 この関数を使わないのでは,計算して結果を出力する作業に,大きな手間がかかります.その一方で,さまざまな%指定があることを,プログラミング授業の初回に解説する必要性はなく,したとしても理解してもらえない可能性が高いです.
 可変長引数関数であることや,戻り値があるけれど多くの場合使わない(「printf(~)」のあと「;」で文を終える)ことは,指導する側は知っておくべきだけれど,初学者が知るべきかというと,そうとも言えないわけです.
 担当科目では,printfの使い方は授業各回のさまざまなサンプルプログラムを通じて,段階的に解説しています.最初はprintf("Hello, world!\n");で,%を使用しない固定文字列です(ただしここにも,「"」や「\n」という要注意の文字が入っています).その後は,整数値の加減乗除,整数型変数を使った加減乗除,剰余(%%で出力は%になることも),フィールド幅,実数型の出力,1回のprintfで複数の値を出力できること,といった流れです.可変長引数は,取り上げていません.使われない戻り値の件は,今年度は,年明け最初に予定している(学生からすると第12回の)授業の「式文」で解説する予定です.


 「かけ算の順序」に,話を移します.先月から多くのツイートを見かけるようになり,私自身もツイートしたり,他の方のツイートをもとにブログ記事を作成したりしています.
 このトピックで,既存のコンテンツの分析として,行いたいのは,「a×bとb×a,答えは同じでも意味が違う」の件です.令和2年度から使用の算数教科書の状況は,以下にて報告しています.

 これについて,海外での状況はというと,かけ算の順序を授業にすると~イランとアメリカシュスター先生の授業~かけ算の順序と交換法則で見てきたとおり,a×bとb×aの対置(具体的な数量の例示も)は,発表した児童が行っています.
 日本に話を戻すと,a×bとb×aとの対置となる,具体的な数量の例示を行うのは,教科書や教師など,子ども以外であるように見えます.
 ということで,「a×bとb×a,答えは同じでも意味が違う」というのは,日本では場面(具体的な数量を含む)が与えられて,子どもたちが場面と式との対応づけを行いながら学ぶのに対し,海外では,対置の場面を示すことが,授業の発表で奨励されている,という仮説を立てることができます.
 この仮説が正しいのか,それとも反例があるのかについては,手広いコンテンツ収集・分析が必要と考えています.
 合わせてどうぞ:理由の総合 - かけ算の順序の昔話