わさっきhb

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とっさの時に人を救えるか

トリアージについて十分な言及のある,個人的には2番目に手にした本です.ちなみに1番目は『救急・災害現場のトリアージ』でした.
前書きで『事業所における安全衛生担当者,スタッフはもとより経営者,人事担当などの関係者はもちろんのこと,一般市民として心得ておくべきことも含めて』(p.4)と,主な読者対象を定めています.今の自分に,まさに最適な本です.
トリアージの実施方法だけでなく,そもそもトリアージは何であって何ではないのか,また救急スタッフが最優先のタグをつけないことの苦悩への配慮も書かれています*1
終わりの4章では応急手当の具体的方法が,図を交えて書かれています.気道確保・人工呼吸・心臓マッサージの方法まであるというのは,一般市民も必要なときには(救急車が来るまでに)しなければならないということですね.しかし,ことが起こってから本を探すわけにもいきませんので,今のうちに理解しておかないといけません.
初版は平成15年10月ですから,それ以降の事例については当然ながら言及がなく,手法に関しても,オーバートリアージ,アンダートリアージについて記述がない点には,注意をしないといけません.
しかし,トリアージの根本的なところについて,他の本などで知る情報から外れることはなく,価格も手ごろですから,トリアージを学びたいという人がいれば真っ先にお勧めしたい本です.
トリアージとは何ぞや(この本ではどのように規定しているか)については後日に取り上げることとして,以下では,トリアージの前提と言えそうなところを引用しておきます.

一 災害時の管理法
最優先事項は,まず,可能な限り自分の安全を確保することであり,二次災害を防ぐことが非常に重要です.救助者が,重症患者を一度に大量に救助し,搬送するのは困難です.医療機関も多くの重症患者を一度に受け入れ,治療に当たるのは難しく,提供できる医療の質が低下する可能性が高くなります.
集団災害発生時の管理を行う上で重要なことは,全体的な流れを理解し,災害時の多数の負傷者をスムーズに管理し,最大限の効果をあげることです.従って,集団災害時の管理の目的は,あらゆる種類,大きさの災害にも役立つ管理方法を理解し,実際の災害現場で,個人や組織が誤ったステップで管理しようとした時に,修正・改善できる能力を養うことです.
(p.63)

*1:その一方で,『プロには厳しくというのが鉄則』(p.64)という記述もあります.ただ,そこの文脈では,プロだから十分に訓練され組織化されており,その判断を信頼してほしい,とも読み取れます.