回覧時間は短い
提出した,修士論文なり卒業論文なりのファイルは,発表会当日に,審査の先生方に回覧されます.
一人あたり,30秒とか1分とかくらいです.
なので全体ではなく,気になるところをチェックして,発表会終了後の審査で確認する,ということになります.
教員によってチェックポイントが違うのは当然ですが,私の場合,次の箇所を見ます.
- 表紙と背表紙が適切か.提出の年度と年月日を間違えていないか.
- 題目が漠然としすぎていないか,絞り込みすぎていないか.表記に見慣れないものはないか.
- (目次などや付録を除外した)本文分量が適正か.
- 図表が適度に含まれているか.
- 最後の章に,何を実施し何が分かったかを書いているか.
- 謝辞は適切か.
- 参考文献の数と内容は適正か.
これらで疑問を感じさせないよう,仕上げてください.本文内容の充実も,確かに必要ですけどね.
コードを入れよう
卒業研究では,「何をしたか」が重視されます.
かつての卒論では,ソースコードを付録に載せるということもありましたが,現在ではしてはいけないことになっています.
かわりに,卒論本文の中で,書いたコードの中で中核となるような,コードの一部を入れられないか,検討してください.
そういうのが難しい人は,データベースに着目して,どんなINSERT文で,設計意図の通りにレコードが登録されることになるかとか,一見複雑そうな検索には,どんなSELECT文を発行するかを,書くといいでしょう.
コードは箱で囲み,図としてください*1.単一行,または複数行のコードを一つの図とするのでもいいし,「どんな対象が,そのコードを含む処理によって,どんな結果になるか」を図にするのでもいいと思います.
コピペ1
論文は,何もない状態から書かないように.
定例ミーティングの議事録や,内外の研究報告のために作ったWord/Excel/PowerPointのファイルを,見直してください.
図表はもちろん,日本語についても,その中で,使えるものを取り入れましょう.
コピペ2
この項目は,自分の研究室限定のルールです.
研究室の過去の卒論や修論,また卒論を書く人は同じ年度の先輩の修論の中に,自分の中に取り入れたいという表現や図があることでしょう.
そのまま引き写すのは,たとえ [ と ] による引用を付けたとしても,良くありません.
努力せず他人のものを引き写すと,論文を読む側は,すぐに違和感に気づきます.それで本人に聞くか,先行事例*2に当たり,コピーと判明するのでは,気持ちよく読めません.また,あなたの修論・卒論を読むことになる後輩が,「ここまでコピーしていいのか」と誤解し,悪しき伝統を生むことになるかもしれません.
自分なりに努力しましょう.例えば
- いいと思った文章あるいは図を,じっと見て,要所を把握します*3.そのあとその書(描)かれているのを閉じて,再現するのです.全く同じになることはないでしょうし,自分の書くべき文章に合わせないといけません.そんな苦労をして出来上がったものは,自分のオリジナルの文章あるいは図となります.
- いいと思った文章を読みながら,図にしてください.そのあとその書かれているのを閉じて,図を自分の原稿に貼り付けてください.前後に日本語を付け加えたら,自分なりの説明の完成です.図は発表資料にも使える,という効果もあります.
ただしそれでも,[ と ] による引用は不可欠ですし,内容のチェックは指導教員が行います.
もう少しだけ細かいことを.先行論文に,何らかのコンテンツの作成手順を書いていて,自分はその処理に関わっていないけれどコンテンツを使うというとき,作成手順をそのまま書くのはダメです.手順を参考にしながら,コンテンツの特徴を書くようにしましょう.
先輩・同輩・後輩の引用
提出のスケジュール上,修士論文では,同年度の後輩の卒業論文を参考文献に書き,本文で引用することは,できません.
逆に,卒業論文で同年度の先輩の修士論文を,参考文献に記載し,引用することは,問題ありません.
卒業論文で同年度の同輩の卒業論文を引用するのも,かまいませんが,最終段階で卒業論文の題目が変わるかもしれない点には,注意してください.
表紙,背表紙
ファイルには,表紙と背表紙を貼り付けてください.
本文を1部印刷してから,表紙のページだけまた印刷します.その表紙の裏面に糊を付けて,ファイルに貼るだけです.くれぐれも,上下を間違えないように.
背表紙は,WordでもPowerPointでもいいので,ちょうどの幅の箱を描いて,その中に,所定の項目を書き入れてください.去年のをまねしすぎて「2007年度」と書かないように*4.それと,縦書きフォントを使ってください.横書きフォントだと,長音記号の「ー」が横になって,それが研究室の本棚を飾ることになります.