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大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

文献紹介心得

卒業研究のゼミ発表で,PowerPointを使って文献紹介をすることになった人へ,アドバイスを.

  • 書誌情報をきちんと書きましょう.そのまま卒業論文の参考文献に入れる体裁にします.ただし,去年または今年の文献については,刊行年ではなく刊行年月にしておくと,見る側に喜ばれます.
  • 文献の位置づけを把握しましょう.論文誌? 研究会? シンポジウム? 全国大会? 査読の有無は?
  • 著者の所属を押さえておきましょう.
    • 学生が筆頭筆者なら,卒論/修論/D論にするための業績の一部として書かれたと考えられます.
    • 教員が筆頭筆者なら,記述の質が高いことが期待できます.ただし実装や評価まで,教員が実施したとは限らず*1,当事者感覚が比較的少ないかもしれません.
    • データベースアプリケーションなどのシステム開発について,共著者の中に当該分野*2の専門家がいない(情報分野の学生と教員が作った)というものもあります.
  • 「文献の記述順に紹介する」か「記述順にとらわれない」かを決めましょう.後者は,自分がこの著者として発表するなら,どうすれば最も効果的なプレゼンができるかを考えて組み立てる,ということを意味します.
  • 文献紹介と,自分の卒業研究との関係*3を,説明できるようにしておきましょう.
  • 研究の目的は,本文から抽出しましょう.タイトルそのものにするのは,文献を読み込めていないように受け取られます.
  • 「何を対象として」「何を使って」「何をしたか」を読み取り,できれば明快な1文で表現*4しましょう.
  • その研究成果が,どういう人々が何をするのに役立つか,本文から抜き出しましょう.見つからなければ,自分なりに考えましょう.
  • 手法の中で,絶対これは聞き手に知ってもらいたい,というものを見つけ,自分なりに表現しましょう.
  • 数式に着目しましょう.
    • 1つまたは複数の数式の制約により,変数の取り得る範囲はどうなりますか?
    • 等号付きの不等式について,どのようなケースで等号が成立しますか?
    • 等号無しの不等式について,なぜ等号が成立しないのですか?
  • 本文に書かれている例を,紹介すべきか,検討しましょう.検討項目は主に,適切(説得力がある)か,妥当(論証の手順に問題がない)かの2点です.あまりにもおかしい場合は,自分で例を作るべきかもしれません.
  • 文献のあら探しをしましょう.誤字脱字,式のミスに始まり,論理的におかしなところ(論理のギャップがあるところ),重要なのに述べられていない事項などです.
  • その研究成果をもとに著者ら,あるいは自分が研究を続けていくと,どのような困難な点がありそうか,それをどのようにして解決できそうか,またどうしても回避できなさそうな限界*5はどこか,本文から抜き出しましょう.見つからなければ,自分なりに考えましょう.
  • 以上のそれぞれについて,発表時に言うべきか,言わずに質問対策として取っておくべきか,よく考えましょう.発表時間は有限ですし,詰め込んで話したところで,聞き手がすべて理解してくれるとは限りません.情報は選別しましょう.適宜,指導教員から,アドバイスをもらいましょう.

*1:誠実な文献なら,コンテンツの情報源とその整備方法について,著者らの外部による場合には,そのことを明記しているものです.

*2:domain-specificとも言います.

*3:「自分の研究における,当該文献の位置づけ」と言い換えられます.

*4:この断りを入れておかないと,「何を対象として」で箇条書きの1項目,「何を使って」も「何をしたか」も同様に表現する人がいるかもしれませんが,発表でこの表現は,「もったいぶった」ように見えます.

*5:限界とは少し違う話ですが,「〜は対象としない」という記述があったとき,なぜしないのか立ち止まって検討したいものです.