わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

知事の掌握術

大阪府の新規採用職員任命式が1日、大阪市中央区の府庁新別館で開かれた。今年度から式典の開会にあわせて国歌斉唱を導入。橋下徹知事は「声が小さい」と一喝。「みなさんは国家のもとで仕事をするのだから、思想信条の自由とかいっている場合ではない。国歌はきちんと歌うのが義務」と早速、新職員に橋下流の洗礼を浴びせた。

http://sankei.jp.msn.com/politics/local/100401/lcl1004011205005-n1.htm

A6ニュース(゚Д゚) : 橋下知事 「声小さい!公務員なら君が代斉唱を」と一喝…職員「学校は国歌教えてくれなかった。日本人として歌えるようにする」経由で知りました.
これ,国歌斉唱をダシにした,新職員に対する知事の掌握術なのですね.というのも,137人が入庁して,従来にない国歌斉唱をしたら,歌えない人がいるものです.ただし理由は分かりません.思想信条を理由としてなのか,突然のことだからなのか,歌詞を覚えていないのか.
ちょっと自分の経験で話をしますが,毎期,数十人の学生が受講する科目を担当していて,試験で出した小問はすべてExcel化し,学生単位,問題単位で点数や正答率を出せるようにしています.そうすると見えてくるのですが,正解率100%の問題なんて,なかなか出てきません.
今回の件に話を戻すと,別にExcelにしなくても,口を動かさない人を一人でも何人でも,見つけることは容易です.もし,みな口を動かしていたとしたら,次は声量を知ります.あるいは,音程が合っているかをチェックします.
そしてそこで見つけた何らかの不備は,任命式の後で持論を展開する際,またとない口実となるのです.
それをうかがい知ることのできる表現が,記事中にあります.新聞記事になるにあたり,知事の発言をas isで伝えているとは限らないことを留意した上で,取り上げますと,

うちの子供が国歌を歌えなくてびっくりした。

のところです.身内が歌えなくて恥ずかしいというのではなく,歌わ(せ)ない教育への批判として,発言しているわけです.
橋本知事の下で,公務に携わられる方がみな,君が代*1斉唱をきちんとできることを目的とするのだったら,事前に歌う練習だとか,国歌斉唱と結び付けた“公務員が持つべき価値観”の徹底だとかをするというのが考えられます.まあ現実にそんなことをしていたらリークされて,それはそれでもめるでしょうけどね.
なお,本日のエントリで「君が代に対する自分のスタンス」を表明していないのは,やはりこれはデリケートな問題であり,社会の立場から歴史の立場から教育の立場から,広い範囲で関連書籍を20〜30冊くらい読んだ上でないときちんと発言できないなと思っているからです.

*1:それまで「国歌」と書いていて,ここで「君が代」と表記しているのに,政治的な意図はありません.英語で(日本語でも)論文を書くときに心がけている,同語の繰り返しを避けるというものです.あと,検索エンジン対策の意図もあります.