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式に単位を書かせるべきか(1)

  • Q: 「しき」に単位を書かせたら済む話だったのではないでしょうか?

それまでの授業で,「しき」として何を書くべきであると教えているかに依存します.画像を見る限りでは,単位を取り除いた形で書くよう指導しているのでしょう.
なお,長方形の面積を単位つきの式で書くのなら,縦も横もそれぞれ長さですが,《問い》について《題意による正答》で単位を書かせると,「3こ×5まい=15こ」「3こ/まい×5まい=15こ」「1さらに3こ×5まい=15こ」のいずれが,学習において適切なのかという問題が発生しそうです.

「×」から学んだこと - わさっき

ちょっと不気味なので,学習指導要領を読み直してみました*1小学校学習指導要領解説:文部科学省でリンクされている,算数(1)第1章〜第2章算数(2)第3章〜第4章です.あと,速度や密度の表現にも関心があったので,理科もダウンロードしました.

理科は

まず理科から言うと,速度や密度についての指導は見当たりませんでした.密度に関して最も関連しそうなのは「物と重さ」で,これは第3学年で取り扱うこととなっており,

イ 体積と重さの関係について,粘土や砂などの身の回りにある物で,体積を同じにしたときの重さの違いを,手ごたえなどの体感を基にしながら比較する。また,てんびんを用いて比べたり,自動上皿はかりを用いて重さを数値化したりすることで,体積が同じでも物によって重さが違うことをとらえるようにする。
(略)
ここでの指導に当たっては,物の形や重さなどについて体感を通して調べるとともに,てんびんや自動上皿はかりを用いて数値化を行い,物の重さを比較するようにする。その際,これらの機器の使用や重さの単位については,算数科の学習との関連を図るようにする。
(小学校学習指導要領解説 理科編, pp.26-27)

とのこと.もちろん教科書・参考書や実際の授業では,gなどの単位つきで書かせることもあるのでしょうが,学習指導要領レベルではそこまで立ち入らないといったところです.
なお,「×」の使用については,てこ関連で,『「左側の(力点にかかるおもりの重さ)×(支点から力点までの距離)=右側の(力点にかかるおもりの重さ)×(支点から力点までの距離)」という関係式』(pp.69-70)と,単位なしで記載がありました.

算数は

次に,算数ですが,「式で表すときは単位を付けない」で徹底されていることが読み取れました.第1学年から登場します.

この活動は,具体的な場面に基づいて計算の意味を理解し,児童が自らこれまでに学習してきた計算の仕方などを活用して新しい計算の仕方を考え,表現することをねらいとする。
例えば,「太郎さんはどんぐりを8個拾ってきました。花子さんはどんぐりを7個拾ってきました。合わせて何個でしょう。」のような問題を通して,計算の意味や繰り上がりのある加法の計算の仕方について考える。
この問題の意味から,同時に存在する二つの数量を合わせた大きさを求める場合になると判断し,8+7というように加法の式に表すことができる。
(小学校学習指導要領解説 算数編*2, p.69)

割り算での単位の扱いが気になりましたが,等分除,包含除,除法と乗法・減法との関係などが書かれているのはp.110で,ここも「記述は単位付き」と「式は単位なし」と書き分けられています.

「式」から「単位」に視点を切り替え,読み直してみました.各学年の指導で,単位という用語が現れる*3のは第2学年のp.89ですが,式で表すとき単位を付けないのは,変わりません.
いえ,1箇所だけありました.『計算の上では,1m^2=10000cm^2であると分かっていても,長さの単位換算での経験から類推して,1m^2=100cm^2と誤ってしまう児童もいる。』(p.148,「^2」は原文では上付きの「2」)です.例えば何らかの計算で,34000cm^2と出たときに,これを3.4m^2に換算するのに使えばいいわけです.なのですが,34000cm^2と算出する過程で,単位を使わないとなると,単位が出たり消えたりで大変そうです.

割合を学ぶことの応用として,私自身は,物質の密度をまっさきにイメージするのですが,「密度」という言葉で算数で最初に登場するのは「人口密度」でしたね.小学校学習指導要領の解説では,第5学年,pp.179-180に記載があります.『1km^2当たりの人口,すなわち人口密度』とあるほか,必ずしも単位量当たりにしなくていい比較例,何を単位量にするかなどの指針なども書かれています.

速度については,第6学年のp.199です.『例えば,時速60kmの速さとは,1時間に60kmの長さを移動する速さということになる』が「時速」の初出と思われます.公式は,『速さについては,(速さ)=(長さ)÷(時間)という式で表されることから,長さと時間から速さを求めることができる。また,速さと時間から長さを求めることもできるし,長さと速さから時間を求めることもできる』となっています.

余談を一つ:単位と離れますが,例の交換法則関連で,p.147には長方形の面積について『(縦)×(横)(もしくは(横)×(縦))』という記述がありました.また立式ではありませんが,縦と横の順番の混同は,p.155の「C(3) ものの位置の表し方」で,3次元空間上の位置を表現する際にも見られました.

*1:学習指導要領をベースとしている理由も,上記引用のエントリ内に書いています.でもそろそろ,図書館かどこかで,何冊かの教科書に当たるべきかなあ.

*2:p.61から始まる「算数(2)」のPDFファイルのほうです.このPDFファイルは表紙がありませんが,一続きでひとつの文書となっているので,「算数(1)」の表題を書きました.

*3:「(小学校で指導する際の)単位って何でもいいの?」という疑問もあったのですが,算数(1)の中で『単位は自由に決めることができるが,多くの人が社会で共通に使っている単位を用いるのが便利である。それらを,普遍単位と呼んだり,共通単位と呼んだりすることがある。』(p.45)を読んで解消しました.