山梨では
PDFファイルです.ドメインはちょっと馴染みでないのですが,山梨県総合教育センター研究開発部が作った文書のようです.
例の論争で,マルにすべき根拠としてよく言われているのが,交換法則(可換性,可換律とも)です.それに対する学習なんかいな,まあ教育に関する部局では何考えてんやろと思いながら,目を通しました.第5学年を対象とした指導計画です.
読み流しそうになって,驚き,何度も読み直したのは:
あきらさんといさむさんとすすむさんの3人は,クラスのお楽しみ会のおやつを買うために,スーパーマーケットにきています。いろいろまよいましたが,1こ25円のチョコレートを40こ買うことにしました。
今,3人は,代金がいくらになるのか考えています。
あきらさん:25×40
いさむさん:25×10×4
すすむさん:25×4×10
3人がどのように代金を求めようとしているのか,それぞれの代金の求め方を絵や図に表して説明しましょう。
(p.78)
何かというと,立式において,3人いずれも「25」を最初に置いたかけ算にしているという点です.そして,交換法則を活用するにしても,25を最初に置いたかけ算なのは変わりません.25×40=40×25=40×5×5=200×5=1000という計算だって,やっていいはずなのに…
ちょっと考えてみたのですが,問題を,
あきらさんといさむさんとすすむさんの3人は,クラスのお楽しみ会のおやつを買うために,スーパーマーケットにきています。いろいろまよいましたが,1こ25円のチョコレートを40こ買うことにしました。
代金はいくらになるでしょう。
を経て
あきらさんといさむさんとすすむさんの3人は,クラスのお楽しみ会のおやつを買うために,スーパーマーケットにきています。40こが欲しくて、いろいろまよいましたが,1こ25円のチョコレートを買うことにしました。
代金はいくらになるでしょう。
まで変形する*1と,「40×25」「4×10×25」「10×4×25」といった式の立て方をする子が出てきそうです.
…と書いて,気づきました.“入口での混乱”を避けるために,議論・検討の出発点となる問題と式を,指導する側が最初にセッティングしたんじゃないかということに.
新潟では
算数研究で授業が学校が変わる―授業改革から学校改革へ (算数授業観改革シリーズ)
- 作者: 田中博史,新潟市立浜浦小学校
- 出版社/メーカー: 東洋館出版社
- 発売日: 2011/01/01
- メディア: 単行本
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編著者・著者ですが,田中博史氏は筑波大学附属小学校の教師をなさっていて,新潟市立浜浦小学校が,『コンサルタント兼師範授業公開授業者として招聘』(p.30)した,とのこと.田中氏の浜浦小学校における指導について,一つだけ引用しておきます.
「○○先生は,どうしてA君の声を取り上げなかったのですか? あの声に耳を傾けることが,今日の授業ではポイントなのですよ」
(p.30)
本の中で,最もページ数の多い章は,第4章の授業実践例で,1〜6年の各学年から3つずつ,事例を紹介しています.かけ算指導も,ありました.第2学年向けの最初の項目,「かけ算(3) どんな計算になるのかな」(pp.73-77)です.導入の問題は:
さっそく「4×8=32」の否定です.子ども同士の議論で,それをダメとしています.
ここから2つのことが知ることができて,まず,「何のいくつ分」によるかけ算の立式が,児童たちには徹底しているということでしょう.そして,図の,花の配置と枠囲みが,「4×8」という式を立てさせるのをひどく不自然にしています.「ひどく不自然」というのは否定表現ではなく,先生の側で意図的にデザインしたもの*2だと,理解しています*3.
この問題はこれでおしまいですが,その後,かけ算で求められない問題と求められる問題を出してから,
●●●● ●●●● ● ● ● ●
の「●(実際にはりんごの形)」の個数を求めるために,「●」を動かしたりもしながら,様々な式を立て,最後に,それぞれの式の良さを比較しています.