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かけ算にまつわる順序

ネットでよく論じられる「かけ算の(式の)順序」に限定することなく,「かけ算」と,「順序」に関連する言葉(「順番」「先」「逆」など)を組み合わせたものとして,どのようなものがあるかを,整理してみました.

  • 九九と式
    • 関連:被乗数先唱,乗数先唱
    • 例:「三四十二」は3×4=12か,4×3=12か
  • 九九の学習
    • 例:二の段から始めるか,五の段から始めるか,(難しいとされる)七の段から始めるか
  • 乗除先行
    • 関連:乗法,除法を加法,減法より先に計算する*1
    • 例:3+2×3を計算したら,9が正解,15は間違い*2
  • 交換法則・結合法則
    • 関連:□×△=△×□,□×(△×○)=(□×△)×○*3
    • 例:1こ90円のシュークリームが、1はこに3こずつ入っています。2はこ買うと、代金は何円になるでしょう?*4
  • 式に表す
    • 関連:乗法が用いられる具体的な場面を,×の記号を用いた式に表したり,その式を具体的な場面に即して読み取ったり,式を読み取って図や具体物を用いて表したりする*5
    • 例:6人のこどもに、1人4個ずつみかんをあたえたい。みかんはいくつあればよいでしょうか。*6

「九九と式」「九九の学習」については,『かけ算には順序があるのか (岩波科学ライブラリー)』第二章で取り上げられています.
「式に表す」の件で,少々気になるのは,遠山啓の記事(「6×4,4×6論争にひそむ意味」)にせよ,それより少し前,昭和40年ごろの論争に対する見解*7にせよ,「順序」に関連する言葉(「順番」「先」「逆」など)が見られない点です.
「6×4,4×6論争にひそむ意味」を読み直してみると,後半で,加減乗除の関係を説明する中に「逆」というのを見かけます.しかしこれは,本日の関心とは別の話です.あと前半,すなわち論争に対する見解の中に「交換法則」が記されています.一応これをもって,順序と結びつけることができます.
なお,1972年1月26日の朝日新聞の記事の中に,「文章題のなかで6という数字が先に出ているから」が入っています.算数についての評価(小学校学習指導要領 昭和26年(1951)改訂版)にも,「…こどもは問題に出てくる数を,その数の意味を深く考えもしないで,出てくる順に書き並べ,その間に,かけ算記号を書き入れる…」とあります.いずれも「問題文中の2つの数値の“出現の順序”」であり,この点は,Shampoo Boy(4.「教師用指導書」に「かけ算の順序」はあるのか?)で確認しています.

(最終更新日時:Sat Jun 16 07:01:22 2012ごろ.当初のエントリタイトル(かけ算にまつわる「順序」)から,カギカッコを取り除きました)

*1:《算数解説》p.158

*2:世に数学の種は尽きまじ(5×3をめぐるお話・第5話)

*3:《算数解説》p.160

*4:http://members.jcom.home.ne.jp/pc-library/library2gakusyuu/18syoninkenn/sugimoriitou.pdf p.6

*5:《算数解説》p.98

*6:1972年1月26日の朝日新聞の記事 | メタメタの日; 『遠山啓著作集数学教育論シリーズ 5 量とはなにか 1 (1978年)』p.114

*7:佐藤俊太郎「5円の品3個の代金の立式は「3×5」ではダメなのか」,『算数・数学教育つれづれ草』pp.46-47