わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

なぜコメント凍結

Q: このブログでは,なぜコメントが書けないですか?
A: ご面倒,ご心配をおかけし,申し訳ございません.コメントを凍結したのは,去年の8月23日です.
きっかけとなったのは,『かけ算には順序があるのか』を読んだの後ろから2番めのコメントです.読んでから,「「実際に『ありがとう』と書いた紙を貼ったら,綺麗な結晶が,『ばかやろう』だと汚い結晶ができたんだ.やってみない者に何が分かる」という主張を,しないようにしましょう.」を最後に据えた,電話で問い合わることを書いてリリースし,コメントの返答のほうは,にべもないものにしておきました.
その後,考えてみて,自分が知り活用していきたい情報源のメドがたっており,またコメントの費用対効果も感じまして,凍結を選びました.削除ではなく,表示させているのは,5×3のほかcomputingカテゴリーでのコメントが貴重だからです.
今後もご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます.
Q: わり算は,逆数にしてかければいいのでは?
A: そのやり方だと,「AからBまでの道のりの2/3を行くのに3/4時間かかりました。この速さで行くとすると,AからBまで行くのにかかる時間は全部でどのくらいですか」*1といった,分数の文章題で,何を逆数*2にすればいいかの発見が容易でないように思います.
Q: かけ算は面積で考えればいいのでは?
A: その考え方では,3キロワット(kW)が2時間(h)で6キロワット時(kWh),だけれど3個入りの袋が2袋だと6個になり,「6個袋」ではないのはなぜか,説明に苦労することになりそう*3で,賛成できません.
Q: 3個入りの袋が2袋は,3個/袋×2袋=6個じゃないの?
A: その考え方で大丈夫ですよ.面積とまた別の,かけ算の構造があるという次第です.「倍」「比例関係」「面積(直積)」という3つの分類のしかた*4が,国内外の本で記されています.
Q: 量は,数と単位の積とすればいいのでは?
A: 物理化学の立式や計算には良さそうですが,数学に親しんでいれば賛同する人はいないんじゃないかと思います.というのも,いわゆるゼロ量の取り扱いに,注意が必要だからです.ゼロ量を含むと,2つの量AとBに関してA+B>Aが言えません*5

小学校向けには,「容器に水が3リットル入っている.□リットル入るコップを使って容器の水を移し替えたい.何回すくえばいいか」という問題で□を0にしてみるのはいかがでしょうか.

Q: 「0リットル入るコップ」って,何?
A: 作り方をご紹介します.(1)缶の飲み物(250mLとします)を買って飲み干します.(2)飲み口の側の円板を切り落とします.(3)切った円板を加工して,取っ手になるよう,缶の横に取り付けます*6.これで,0.25リットル入るコップができました.(4)底の円板も切り落とします.これで,0リットル入るコップができました.おしまい.すくってもすくっても,水を蓄えられないので,このコップを使って移し替えることができないという次第です.ちなみに底の円板のほうですが,高さを0にしてできた形とみなせば,これも0リットル入るコップとなります.
Q: 欠点ばかり挙げて,あなたは批判者?
A: 一時的に,批判者になってみました.(関連:あなたは「批判者」ですか?「学習者」ですか? ~本『QT 質問思考の技術』 - ライフハックブログKo's Style
ここで学習者にスイッチしておきますと,利点と欠点をよく見た上で,複数の手段の中から選択(採用)がなされることを期待するとともに,利害関係者(採否の決定者)は多くの場合,自分の「思い」に反する主張のメリットが軽視されデメリットが重視される点を,忘れないようにしたいものです.
Q: 中国の話の「量の扱いで不具合」とは,どういうこと?
A: ツアーほかで引用している,「量の扱いではやはり不具合があって,教師たちの丁寧な対応によって乗り越えているところである。」のくだりですね.

私も知っている記述はそこだけなので,想像ですが,「連続量×分離量」や「連続量×連続量」への扱いなのではないでしょうか.もう少しいうと,かけた結果がどんな量で,したがってどんな単位を添えればいいかという課題に対し,被乗数と乗数をともに「因数」として区別しない方針は,その解決を遠ざける方向に向くように思うのです.

これについては,上に書いた「6キロワット時(kWh)」「6個袋」の件が関連します.小学生向けには,10円玉の長方形的配列にもリンクしておきます.
Q: 「かけ算の順序」の議論って,“あら探し”が多くない? どうして?
A: 数学教育学(算数教育を含みます)を「学問」とするなら,その究極解,あるいは理想状態が見出せていない,ということだと思っています.といっても悲観する話ではなく,他の学問分野もこれは同様なのです.
「究極」「理想状態」を得るのが困難となると,妥当解を探ることになります.妥当解は,その状況におけるいわば局所最適解であり,時間の経過,社会情勢の変化により,最適解が変わり得ます.そういった変化に対応することも,教育に携わる人々には求められます.大学教員である私も,そのことは自覚しています.

以上を前提としたとき,そこに関わるそれぞれの人(先生,児童・生徒,ネットウォッチャー,など)が満足だとか納得を得るために,克服すべきものが何で,そのためにはどんな行動すればいいかが,人ごとに異なっているのが,実情なのではないでしょうか.

(リリース:Mon Nov 5 00:53:54 2012ごろ)

(最終更新日時:Tue Nov 6 05:22:04 2012ごろ)

*1:算数の基礎学力をどうとらえるか―新世紀に生きる子どもたちのために』p.54.先達に学ぶ,移り変わりを知るより孫引き

*2:わり算にする状況で,「何を逆数」「何を分母」「何を除数」はいずれも同義になります.

*3:なのですが,説明は可能です.Greerを踏まえ,キロワット時を求めるのは面積と同様「積の乗法」だけれど,3個入りが2袋の件はそれと異なる「倍の乗法」,と振り分ければいいのです.

*4:「3個/袋×2袋=6個」はこのうち,比例関係に該当します.「3個×2袋=6個」とし,かける数の単位を無視するのは,倍の考え方です.倍の乗法,積の乗法もどうぞ.

*5:量と数の理論 (1978年)』pp.26-27

*6:コップ、カップ、グラスの違いによると,取っ手はあってもなくても「コップ」になり得るので,面倒なら,この作業はしなくてもいいですね.