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wikipedia:かけ算の順序問題は,ここ数日,更新されていません.
参考文献の中に,「2×3? 3×2? 算数の文章題でこだわる“順序”」と題する,2012年11月5日付中日新聞記事があります.| 朝夕刊から | 中日新聞プラスでリンクされていますが,そこから先はログインが必要とのこと.会員登録するには購読が前提らしく,まだ内容を入手できていません*1
代わりと言っては何ですが,ノート:かけ算の順序問題 - Wikipediaを見ることにします.といっても,議論が交わされているところには,あまり関心がありません.書き込みがあって他の人からの意見や情報がないところが,見ていて残念に思うのです.


10日以上放置なのが,最後の「追記希望内容」のところで,Benzoylさんが2回に分けて書いています.箇条書きのところを取り出して,一つひとつ,自分なりに調べ直してみました.出典なしの引用は,上記ノートからです.

1. 単価記号@の表記順との関係。

単価×数量,数量×単価で例を挙げましたが,いくつかレシートを見た限り,@付きの数すなわち単価は,×の左にも右にも置かれます.いくつ分のほうは,単位なしまたは「点」がつきます.
海外だと「75g×5」「3×80g」といった形で,これまた「一つ分の大きさ」が左右どちらにも来るのですが,それには単位が付いており,いくつ分は単位なしです.
このようにして,身近なところから,「世の中のかけ算」と「算数のかけ算(式で表すときには単位を付けないのが普通)」の違いを確認できます.
ただし,“日本”の“世の中”の“物品の数量表記”に関しては,「×」の左右に,単位付きの数量が書かれ,総量(積)の単位はその左側(かけられる数)の単位と同じとなるのが多数です.

2. 洋算が輸入されるまで和算ではどうだったのか。

情報を持ち合わせていません.

3. 「multiplicand (被乗数)」「multiplier(乗数)」が英語にあり、日本では「かけられる数」「かける数」と教える場合がある。

http://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/sansu/kodomo/10pun-drill/2nen/q07_13.htmlのことでしょうか.

4. 当初は割り算と同じで見た目は分かりやすい(例:15×3と15÷3)が、数学の方程式を教える段階では洋式の表記順(例:4x)となり混乱を招く弊害を伴う。

数学者による「かけ算の順序」の「中学校式」「不本意」が関係しそうです.
細かいことですが,方程式より前,「文字を用いた式」での注意点になると思われます.

5. この記事の自転車とタイヤのような大小・主従関係のない場合。例えば単純な長方形の面積を、公式と逆の「横×縦」で計算するのも誤りなのか。

大小・主従関係のない場合は,直積(デカルト積)や,〈乗数と被乗数を区別しない文脈〉(で分離量に関するもの)に相当します.この場合は,被乗数と乗数を交換した2つのかけ算の式がともに,その場面を表す式となることを,指導案・問題集などから知ることができます.
長方形の面積については,wikipedia:かけ算の順序問題に情報が加わっていますが,上野健爾氏の指摘があった時点でも,学習指導要領解説は

つまり,長方形の面積は,(縦に並ぶ単位の正方形の個数)×(横に並ぶ単位の正方形の個数)=(単位の正方形の総数)によって求めることができる。そして,縦(または横)に並ぶ単位の正方形の個数は,縦(または横)の辺の長さを表す数値と一致している。横(または縦)についても同様であることから,
(長方形の面積)=(縦)×(横)
という公式が導かれる。
(『小学校学習指導要領解説 算数編』p.118)

となっていて,縦と横が交換可能であることに,配慮がなされています*2
これと別アプローチですが,長方形の面積の公式における「縦×横」の変遷と多様性についても興味深い内容でした.

世界のほとんどの言語にない助数詞(本・枚・台など)も関係?
遠山氏は『水道方式とは何か』で 「算数教育における助数詞廃止論」(?)も唱えたようです。

助数詞がらみでは,「混み具合(人口密度)」を求める際の「人/m^2」「m^2/人」に注意が必要なように思います.
海外事例を一つ挙げておくと,『Help Your Kids With Maths』p.22に,わり算(等分除)を理解するための式として「4 SWEETS ÷ 2 PEOPLE = 2 SWEETS PER PERSON」があります*3

和算における縦書き、そろばんとの関係?
のちのち複数桁の計算(例えば4桁×2桁)を教える際などに弊害?

和算・そろばんについては,知識がありませんが,「複数桁の計算」というと,筆算が関係しそうです.筆算の順序でまとめています.

「一人44円ずつ、1250人が募金した」などの場合、1250×44にした方が計算しやすいなど。

いくつか,思い浮かぶものがあります.おそらく小学校では,いったん44×1250と式にしてから,ひっくり返して1250×44の計算をするのが,優等生的な解答になると思われます.

ただ,「一人44円ずつ、1250人が募金した」というのはちょっと非現実的です.ここは,麻雀牌だとかトランプだとかの枚数で考えるのがよさそうです.
麻雀牌は「日本においては34種類136枚の牌を使うのが一般的」(wikipedia:麻雀)で,これを34×4=136と表すことができます*4.ここの「×4」は,種類を4倍にするのではなく,基準量となる「34種類」を「枚数」に変換するための作用素として働きます.式として書くなら,「34種類×4枚/種類=136枚」です.
このことを理解するための数理は,かける数が1あたりでまとめています.2年生,3年生には,困難と思われます.麻雀牌の枚数については,過去に将棋のマスの数からで書いています.

具体例浮かばずも、3つ以上の掛け算(その場合も被乗数は必ず単一で乗数が複数となるのか)

結合法則」ですね.かけ算の順序,計算の順序の後半に書いています.

現実(商談など)には乗数と被乗数のどちらか先に片方しか数値が判明していない場合もあること。

3年のわり算かけ算の「問題44」,かなあ.

関連して割り算との違い(0では割れないが、0を掛けることは可能)
(よく分からないが)例:「参加者は何人?」→「で、一人頭いくら」

「0で割ることができないこと」と「かけ算・わり算の相互関係」が交じっているように見えます.それぞれで良い情報を,提示できないのが残念です.


もう一つ,「テンプレ除去の提案」に対し,Sparrowhawk4344さんが何回かに分けて書き込んでおり,中立性に対し疑問を示しています.その主張のいくつかには賛成で,外から見る者としては,「この項目は文章としてまとまりに欠けるため、修正・推敲を広く求めています。」の対処をして,それからテンプレ除去の再提案と進めるのが,無理のない展開かなと思っています.
中立性に関しては,「正しい順序」の出元や,それを誰が主張しているのかの確認に加えて,

  • 「サンドイッチの法則」という特殊な規約を遵守するように指示する[要出典]。
  • 「3人にそれぞれ4個ずつミカンを配った。ミカンは全部で何個か」という問題

(この2項目はwikipedia:かけ算の順序問題から)
といった書き方にも,疑念が残ります.前者は出典を,その種の指導をする人に求めているかような印象を与えます.後者では「配った」と,配る動作を含むような記述になっているので,トランプ配りを認めやすくなっています*5
なお,Sparrowhawk4344さんの冒頭修正案には賛成できません.かけ算の基礎となる式は,「1あたり×いくら分」よりも「1つぶんの数×いくつ分」のほうが,政治色を帯びていませんし,「[要出典]」については,http://ci.nii.ac.jp/naid/110007994852の英語のほうが十分に出典になっていると思います.

(最終更新:2012-11-22 早朝)

*1:先週,昼食の帰りに大学図書館に立ち寄りましたが,中日新聞は見当たりませんでした.

*2:長方形の面積の公式としては縦×横の一つとしておき,求積の際に,与えられた長方形から縦と横のペアの認識を「どちらでもよい」とすればいいのです.

*3:他に百分率のところで「0.75×100=75%」「+17.5%」もありますが,本全体として見ると,式には単位や,助数詞に相当するものを書いていません.

*4:小学校では,4×34=136,といきたいところですが小学校で麻雀牌を持ち出したら社会問題になること間違いなしなので,誰もしないでしょう.

*5:遠山が俎上に載せたのは「6人のこどもに,1人4こずつみかんをあたえたい.みかんはいくつあればよいでしょうか」ですし,『活用力・思考力・表現力を育てる!365日の算数学習指導案 1・2年編』p.66で「1個ずつ置くか,2個ずつ置くかという置き方ではなく,置いた結果に着目させる」と注意している出題は,「子どもが3人います。みかんを1人に2こずつあげます。みんなでなんこいりますか」です.