面積図を使って各種の四則応用問題(俗にいう○○算)を解く方法は,建部賢弘以後久しく途絶えてしまった.鶴亀算の図解法が出てくるのは,実に百年以上経った1830年(天保元年),長谷川寛(1782年 天明2年―1838年 天保9年11月20日)の『算法新書』の中である.しかし,それ以後も面積図による○○算の解き方は市民権を得ず,無視され続けた.私事で恐縮だが,私は娘(今はもう50歳の婆さんだ)が小学生の時,面積図を使って○○算の解き方を教えた.娘は1当たり量を見つければ,面白いように問題が解けると喜んだ.そして意気揚々と多人数が受ける業者テストに参加した.文章題は殆ど解けたと云って帰って来た.やがて返却されたテスト用紙を見ると,面積図は全部×印が付けられ,結果は惨憺たるものだった.要するに面積図が描いてあれば,それだけで門前払いという採点方法のようだった.以後,娘は私の云うことを聞かなくなった.塾で教えるやり方でないといい点は貰えないらしい.
(p.30)
残念な話です.
この件,「かけ算の順序問題」と共通する要素があります.一言でいうと,「学校が教えるのと違う方法で解いたら,正解としてくれない」です.学校批判の基本パターンの一つと見て,いいでしょう.
「答え方」が理由で,不採用(不合格)になったという話を,最近読みました.出版そのものは2005年です.
MNCSの人事は公募制で、人事権はスタッフ数名とトーマス校長からなる委員会にある。そこで18項目にわたるMNCSのアドバイザーに必要なスキルを提示して、アドバイザーとしてやっていけるかどうか意思確認を行なう。また、面接を通じて、アドバイザーとしての資質・能力を備えているかどうかを判断される。これは余談だが、生徒にも意見を述べる権利が与えられており、アヤコが通ったアバロン・ハイスクールでは、応募してきた人が、生徒の質問に対して学校のスタッフの方を向いて答えたので、「この人は私たち生徒の意見に耳を傾けないだろう」ということで採用されなかったという話である。
(p.54)
補足を.MNCS (Minnesota New Country School)では,プロジェクト・ベース学習を開発・推進しており,アバロン・ハイスクールはそれを採用している高校とのこと.プロジェクト・ベース学習については,著者の一人によるhttp://benesse.jp/berd/center/open/berd/backnumber/2007_11/fea_uesugi_01.htmlで読むことができました(現在はデッドリンク).個人的には,タイプA学習,タイプB学習のうちの「タイプB学習」をやっているんだなと理解しています.
学校のスタッフの方を向いて答えていたので不採用の話ですが,生徒のことを考慮すると,その理由はなるほどなあとなります.
しかし,不採用とされた側,それも本人ではなく「近い人」からすると
- 知り合いが,近所の新興の高校でアドバイザーを募集してたので面接に行った.結果は不採用.理由は「生徒の方を向いて答えていない」からだって.そんなところが審査されるなんて,信じられない.子どもに採用権があるとでも言うのか.
となったりして,そんなのがWebで扇動気味に書かれると,盛り上がったりするんだよなあなんて思います.「生徒の質問に対して」が抜けるのも,ありがちです.
昨年,「親として,我が子はこうあってほしいと願う権利がある一方で,学校や親の要求に対して自分なりに調整し,その都度「答えを出していく」のは子ども自身である」と書きました.そう思うようになった一節を,抜き出します.
もう40年以上も前のことですが,筆者は子どもの算数の教科書を見ると単位をつけていないので,これでは数学ができなくなってしまうと思い,自宅で教えるときは式には単位をつけることを要求しました。上の男の子は私が相手のときは単位をつけ,学校ではつけないと使い分けました。結局両方でマルを貰っていたわけです(これはあとで知ったことです)。一方,下の女の子は頑固に学校の先生の方針に従い,私のいうことは聞こうとはしませんでした。案の定,上の男の子の方が数学の実力はつくようになりました。
その結果はどうなったかというと,ともに東京大学に入学できましたが,男の子は理学部数学科に進学したのに対して,女の子は教養学部教養学科でした(もっともこの女の子も今は高校の数学教師をしていますが)。
(p.7)