- 作者: 盛山隆雄,志算研
- 出版社/メーカー: 東洋館出版社
- 発売日: 2013/05/08
- メディア: 単行本
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- 作者: 結城浩
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2013/04/11
- メディア: 文庫
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とはいえ,自分の持つ経験との照合は,不可欠です.『算数教科書アレンジ事例30』は,いわゆる「かけ算の順序」に批判的な人にとって,読むに堪えない本だろうなあというのも,想像できます.気になったところはというと:
- pp.32-35では「5×3? 3×5? どっち?」として,「袋が5袋あります。それぞれの袋に,3個ずつあめが入っています。さて,あめは全部でいくつあるでしょうか」を出題し,子どもたちの話し合いを通じて,3×5が正しく5×3は間違い(別の「お話」になる)と導いています.
- 次のpp.36-39では,長方形配列(積の乗法)に対して複数のかけ算の式で表せることを学習しています.
- 等分除には「トランプわけ算」,包含除には「まとめとり算」という独自の名称がついています(p.57).トランプわけ算の対象は,1列横並びです.
なのですが,この本で一番の驚きを持ったのは,「4×6−2×3」の式で面積を求められる形として,(0,0), (4,0), (6,2), (4,4), (2,4), (0,2), (0,0)を結んだ多角形を挙げていたところです(p.83).図をつくりました.
1目盛りを1cmとし,単位を付けた式にすると,4㎝×6㎝−2㎠×3=24㎠−6㎠=18㎠となります.「3」に単位がないのは,「3つ分」なので「3倍」となるからです.図形としては,長方形から,2㎠の三角形3つを切り落とした形となっています.
『数学文章作法』は,英文の書き方の本(を読んできた経験)と結びつけて理解するのが良いように感じました.また「メタ情報」(pp.99-103)の重要性については,「PはC上にあるとしよう」と「点Pは曲線C上にあるとしよう」という悪い例・改善例のペアでもって,なるほど納得の内容になっています.
「優しい本」は,「よし,自分もやってみよう,と思わせる本」であるようにも思います.上に書いた面積計算の件では,『算数教科書アレンジ事例30』では図形を提示する子どもと,要所を説明する別の子どもが登場しますが,単位付きの式までは,書かれていません.『数学文章作法』で読んだことと合わせて,自分なりに表現を試みた次第です.
当面,数式混じりの論文を書く予定はなく,ましてや算数教育に携わるなんてこともないのですが,情報教育---今期はCプログラミングと情報セキュリティ---で使いどころがないか,探っていくとします.
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追記:複素数の導入について
『数学文章作法 基礎編』p.157では,「を満たす実数は存在するのでしょうか.」「いいえ,を満たす実数は存在しません.」「では,を満たす数を新たに定義してみましょう」の3つを字下げさせて地の文の中に埋め込み,そのあと,「このようにして,新しい数――複素数が自然に導入できます.」と記しています.
しかし,複素数の大小比較は要注意です.実際,http://www004.upp.so-net.ne.jp/s_honma/number/complexnumber.htmでは,複素数に関して,実数と同様の性質を持った線形順序が存在しないことを,背理法(もし存在したら,i<0,i=0,i>0のいずれであっても矛盾)によって証明しています.
複素数を導入するための適切な問いは,「を満たす実数は存在するのでしょうか.」ではないかと思います.
(リリース:2013-05-10 朝)
(最終更新:2013-05-11 早朝)