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平成27年度算数教科書読み比べ(2)〜かけ算の出題

1. 基準量が後に示された問題

基準量が後に示された問題について,6社(東書・大日本・学図・教出・啓林館・日文),各教科書の掲載ページをまとめておきます.

発行者 掲載ページ
東書 【2下】pp.16,18,21,24,34,48; 【3上】p.101
大日本 【2】pp.128,136,141,207
学図 【2年下】pp.34,36,38
教出 【2下】pp.16,28
啓林館 【2下】pp.19,21,26,31,120; 【1】p.150
日文 【2年下】pp.26,33

出題例を一つ(学図【2年下】p.38).

みかんが 8ふくろ あります。どの ふくろにも 9こずつ 入って います。
① 絵を かいてみましょう。
② しきを 書いて,答えを もとめましょう。

東書の「【3上】p.101」と啓林館の「【1】p.150」については,読み比べ(4)をご覧ください.

2. □×△と△×□の違い

該当ページは,東書【2下】pp.12,21,36,大日本【2】pp.140,207,日文【2年下】p.94です.
東書と大日本は,算数教育・資料集(教科書・論文・その他)をご覧ください.日文の問題は次のとおりでした*1

あめは ぜんぶで 何こ いりますか。

(あ) あめを,1人に 2こずつ 3人に くばります。

(い) 2人の 子どもが います。あめを,1人に 3こずつ くばります。

① 上の 場面を あらわすように ブロックを ならべましょう。
② 上の 場面を あらわすように ○で 図を かきましょう。
③ (あ),(い)の 場面で,1人分を あらわす 数は,それぞれ いくつですか。
④ 答えを もとめましょう。

3. 4×3=3×4

掲載内容(東書【2下】p.20)を自分なりに再構成してみます.*2

4×3と 答えが 同じに なる,
3のだんの 九九を 見つけましょう。

「かけ算の式」と,「他のかけられる数」を問題文の中で指定し,等しくなるようなかけ算の式を答えさせる問題は,他の教科書にもありました.教出【2下】p.28の「6×2と同じ答えになる3のだんの九九をいいましょう。」です.
そこにも絵が添えられていて,6個のケーキが収められた箱が2つ,あるのですが,3個ずつ4種類のケーキとなっています.「3のだんの九九をいいましょう」ですから,3×4が期待され,4×3は間違いとなります*3
そしてこの例で得られる等式は,6×2=3×4ですので,交換法則の学習を意図したものではありません
そもそも小学校学習指導要領解説 算数編に書かれている「12個のおはじきを工夫して並べる」は,交換法則の学習ではなく---その素地にはなるでしょうが---,「数の乗法的な構成についての理解」が主眼となっているのでした.


次の解説文は,本エントリで示した各出題の特徴を反映したものとなっています.

2年生の導入時では,被乗数と乗数を明確に区別して扱っているが,これもかけ算の意味の理解を確かにするためと考えられる.図1のみかん全部の個数を4×6=24と表すときに,被乗数4が一つ分の大きさ,乗数6が幾つ分を表していることを大切に扱う必要がある.ただしこの意味は世界共通でなく,例えば英語ではこれを6×4=24とするので,被乗数,乗数の意味は逆になる.なお昭和44年の「小学校指導書算数編」では,基準にする大きさのいくつ文かにあたる大きさを「表わす」ことに触れているが,表現という側面からは被乗数と乗数の意味が特に重要となる.(略)
(布川和彦: かけ算の導入 − 数の多面的な見方、定義、英語との相違 −, 日本数学教育学会誌, No.92, Vol.11, pp.50-51, 2010.)

(最終更新:2014-07-14 朝)

*1:「(あ)」「(い)」は,原文では丸囲みの「あ」「い」です.

*2:手書き風に,小丸を大きく囲い込むという図は,東書【2下】pp.9,16,18,20にあり,それ以降は見当たりませんでした.

*3:1種類のケーキが3つ横並びで,4種類(4グループ)ある,という絵の表示もまた,4×3と表すのを困難にしています.