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おなじかずずつ

いきなりですが問題です.

n個の同一の物品を,同じ数ずつ分けるのは,何通りありますか.nを用いて表しましょう.
nは正の整数とします.物品は分割できません(2n人に1/2個ずつは不可).
また「1人だけ」「n人に1個ずつ」は除外します.

例えばn=4のときは,「2人に2個ずつ」分けることができ,他は考えられないので,1通りが答えとなります.
といったところで解答はというと,nの約数のうち,1とnを取り除いた数の個数です.いくつか,数を当てはめてみると,n=4としたとき,約数は1, 2, 4で,1と4を取り除いたら2のみで「1通り」です.n=12の場合には,約数は1, 2, 3, 4, 6, 12なので,「4通り」となります.
素数の場合は,2人からn-1人までの間で,「同じ数ずつ分ける」ことができませんので,「0通り」です.と言いたいところですが,「(同じ数ずつ分けることが)できない」と書くのが無難ですね.n=1のときもです*1
1を除く平方数のときは奇数通り,そしてそれ以外の合成数は偶数通りとなります.
元ネタです.

執筆者は熊本市教育センターの方で,常勤の教諭というわけではなく,文章も「久々1年生を相手に算数の授業をした。」から始まります.
1年「おなじかずずつ」の授業です.4個を2人兄妹(姉妹)で仲良く分けるには,と問いかけ,2人兄妹(姉妹)の子どもの中から1人を指名して,黒板上で分けさせると,2個ずつになりました.先生は「どうして」と尋ねるのですが,子どもたちからは「2個ずつだと文句なし」「3個と1個だったらけんかになるよ」と返ってきます.
そこで「仲良く分ける」が「同じ数ずつ(分ける)」に取って代わり,個数を変えていきます.4個だったのを8個にしたら,12個だと,13,14,15だと,と値を増やし,nに応じて何通りになるかを求めさせ,nが大きくなっても必ずしも分け方は大きくならないことなどを確認します.
タイトルの「多面的に考えようとする態度を育てる」は,このようにnを変えるとどうなるかを見ていくほか,n=12において,先生が「12個の場合が3通りになったね。これでいいかな?」と問いかけて,「先生,まだあります」を引き出す(p.43)ところにも,現れています.
ところで「同じ数ずつ」で思い浮かぶのは,『小学校学習指導要領解説算数編』の記述です.PDF版ではp.65より読めます.

具体物を等分することについては,全体を同じ数ずつ幾つかに分けたり,全体を幾つかに同じ数ずつ分けたりする活動を扱う。例えば,8本の鉛筆を,2本ずつや4本ずつなど,同じ数ずつ分けると何人に分けられるかを操作や図で説明したり,分けられた結果を式に整理して表したりする。このような活動を通して,8という一つの数を多面的にみることができるようにし,数についての感覚を豊かにする。

直後には,丸の並びと,たし算の式もあります.

○○ ○○ ○○ ○○    ○○○○ ○○○○
  2+2+2+2         4+4

冒頭の問題では,n=8の場合,(1と8を除く)約数は2個なので,分け方は2通りです.累加の式を見比べると,異なっていますが,「2人に4個ずつ」「4人に2個ずつ」と書いてみると,出現する2つの数を交換したもの,ということで,分ける活動が,交換法則の素地であるようにも見えてきます.

  • 「a人にb個ずつ」の形の表記は,「多面的に考えようとする態度を育てる」で何度も出現します(もちろんaとbは具体的な数に置き換えられており,「個」ではなく「こ」です).2年でかけ算を学習する際には,式はb×aの形が期待され,累加と関連づけて,確認することができます.
  • https://twitter.com/MaaMaamaika/status/834360075498106880で,「4人の 子どもに おにぎりを 3こずつ あげます。ぜんぶで なんこ いりますか。」の問題に対し「何がバツなのかわからない」とおっしゃっている件,余計なものを書いているのかな,答えの「こ」が読みづらかったのかなと,思ったのですが,ツイートを読み進めていくと,先生の採点ミスだったのですね.
  • 算数授業研究はVol.108(isbn:9784491032986)とVol.109を同時に購入しました.Vol.108のほうで「包含除先行」の語を見かけました.以前にこれで記事を書いたことがあるなあと思いながら,Googleで検索してみると,1位に来ていました.ただこの語は自分の造語というわけではなく,例えば2008年の文献(http://ci.nii.ac.jp/naid/110008599191)にも現れます.

*1:n=0のときは,どうでしょうか.「0個の物品」というのを考えるのなら,「2人で0個ずつ」も「3人で0個ずつ」も可能で,いくらでも,分け方を挙げられます.「無限通り」と言ってもいいのでしょうが,n=0は考えないほうがよさそうです.