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縮尺1/500の図をかいて,木の高さを求めましょう

いきなりですが問題です.

次の出題について,東京都内の6年生,約47,500人に解答してもらったところ,正答率は45%でした.なぜ,正解できなかったのでしょうか.

解答の前に元ネタです.東京都算数教育研究会 平成29年度 学力実態調査の第6学年,大問2で,http://tosanken.main.jp/data/jittaityousa-kousatu/h29jittaityousa-kousatu/h29jittaityousa-kousatu_6.pdfの1ページ目右に,問題・解答類型・解説が載っています.
「木の高さ」の正解は「17(m)」となっています.大人モードでは,木の高さは20tan40°(m)と表せます.Rubyインタラクティブシェルで「20*Math.tan(40.0/180.0*Math::PI)」を打ち込み,Enterを押すと,16.781992623545598と出ました.「(20*Math.tan(40.0/180.0*Math::PI)).round」とすると,17です.
本記事では,「どのようにすれば,正解できるか」ではなく,「どのような原因で,正解できなかったか」を検討することにします.
解説を見ると,1:500の縮図をかくことで,20mは4cmになり,底辺を4cm,角の一つが直角,他の一つが40°の直角三角形について,木の高さに対応する長さを測定すると,3.4cmになるとしています.精度を高めるなら,「4*Math.tan(40.0/180.0*Math::PI)」の計算により,3.3563985247091197です.もし作図と測定の結果,縮図上の高さを3.3cmとすると,木の高さは,3.3×500÷100で16.5mとなります.
木の高さを求めるにあたり,どこかで四捨五入せよという指示が見られません.そこである子どもが「16.5(m)」または17に近い値を記したものの,校内の採点で不正解とした,という可能性がまず思い浮かびます.この場合,縮図を適切にかいていれば解答類型はC1,図ができなかったらC3になります.
解説には「20mの1/500が4cmであること、分度器等を用いて正しい縮図をかくことなど、複合的な能力が必要とされることも正答率低下の原因になる」とあります.ということで,この学力調査では,目盛りのついた定規やコンパス,分度器の使用を認めると指示していたけれども,児童らはそれらを持参しなかった,という可能性も,大いに考えられます.
しかしこの問題文と解説を見て,「縮尺1/500」が分かってくれなかった可能性のことを,考えずにはいられません.「/」の記号は,個人的に把握する限り小学校の算数では見かけません.縮尺を「\frac{1}{500}」または「1:500」と書いてあれば,縮図にしてみようかという子どもたちも,いくらか,いたのではないかと想像します.
算数での縮尺の表記例を知るには以下の2件が有用です.

そのほか,問題文と図だけを見たとき,「Aさんの絵」がすでに,縮図となっているのではないかとも思案します.あるいは,40°・直角・20m・□mの三角形と木の絵の入ったものを原図として,この\frac{1}{500}の縮図をかこうと試みた子どもがいたかもしれません.
さて,解説の前の表を見ると,平成29年度には☆がついており,「年度の横の記号(※)は、問題に変更を加えたものです。(☆)は、問題の集計に変更を加えたものです。」とあります.平成27年度の問題に,アクセスしてみました.http://tosanken.main.jp/data.htmlから,http://tosanken.main.jp/data/H28/gakuryokuzittaityousa/h27jittaityousa_kousatu_6nen.pdfを見ると,2ページ目にあって…

数値も角度も,ぜんぜん違います.これは☆ではなく※とすべきでしょう.
辺の長さの比が3:4:5の三角形が,直角三角形になるのは,三平方の定理のほか,実際に作図することでも,確かめられます.角度が37°きっかりになることはなく,ふたたびRubyインタラクティブシェルで「Math.atan2(3,4)/Math::PI*180」を計算すると36.86989764584402と出まして,「(Math.atan2(3,4)/Math::PI*180).round」で37が得られました.


平成29年度 学力実態調査では他に,第3学年の大問1(6つの三角形から,「2つの辺の長さが等しい三角形」をぜんぶ選ぶ問題)で,(お)を選んでいない解答が19%いるとしていますが,鉛直方向の辺は水平方向の辺の9割程度の長さであるように見えます.平成27年度分についてもです.