かけ算の話で,当ブログとサブブログでよく引用をしていたVergnaudが,2021年に亡くなっていたことを知りました.2021年6月6日没,88歳とのこと.
外部リンクの3番目に,アクセスしてみました.
フランス語で書かれています.英語版はなさそうですが,Chromeの機能で日本語に翻訳して,内容を把握できました.ページの下部には,項目ごとに箱で囲まれており,サイト内のリンクになっています.
その最初,Quelques exemples pour commencerに移動すると,箇条書きの中で「Multiplicative structures」が挙げられていました.「1983」から始まる書誌情報は,PDFファイルへのリンクです.
ということでVergnaud (1983)の本文を,無償でダウンロードすることができました.
ファイルを開くと,カバー*1,(粗い画質の)書影のあと,本文です.
このPDFファイルについて,文書のプロパティを見ると,「作成日: 2021/07/18 2:07:59」「更新日: 2021/09/05 15:22:22」となっています.Vergnaudの死後,どなたかが,著作の整理とサイトの維持を行っているものと,理解しました.
同じ「Multiplicative structures」というタイトルで,1988年に出版された件は,サイト内を探しても,Google検索で"site:www.gerard-vergnaud.org"を付けてみても,見当たりませんでした.
代わりに1988年に書かれたもので,内容的に関連するものを,ダウンロードしました.Invited Plenary address(本会議の招待講演)です.
- Vergnaud, G.: Theoretical frameworks and empirical facts in the psychology of mathematics education, Proceedings of the Sixth International Congress on Mathematical Education (ICME-6), pp.29-47 (1988). https://www.gerard-vergnaud.org/texts/gvergnaud_1988_theoretical-frameworks_icme-6-budapest.pdf*2
ところどころに図や式が入っています.例えばp.32の「3+6=6+3」「a+b=b+a」は,加法の交換法則のtheorem-in-actionで,同ページ後半ではbilinear function(複比例関数)を紹介しています.1つの文章題で,累加(repeated addition)と次元解析(dimensional analysis),scalar ratioとfunctional ratio or rateを対比させた事例は,(ページ番号が欠落していますが)p.36で読むことができます.
当ブログ・サブブログ(かけ算の順序の昔話)で取り上げたのは:
- Vergnaudと銀林氏の「かけ算の意味」
- かけ算の順序論争について(日本語版)
- かけ算と構造
- 等分除と包含除,それと不名数―Klapper (1916)より
- かける数が1あたり
- 段数×4=周りの長さ
- 4×100m,−60kgに+100kg
- ボタンは5×3
*1:このページに書かれているURLにアクセスするとエラーが表示されます.本記事執筆時にダウンロード可能なURLはhttps://www.gerard-vergnaud.org/texts/gvergnaud_1983_multiplicative-structures_acquisition-mathematics.pdfです.
*2:この会議について,https://www.mathunion.org/fileadmin/ICMI/Conferences/ICME/ICME%20proceedings/ICME_06_1988_Budapest.pdfが予稿集の全体で,日本人による報告はhttps://doi.org/10.32296/jjsme.71.3_66より読めます.